がんばらない作戦”阿蘇ラウンドトレイル ”

109km,累積標高5000m +

 

距離も累積標高もたっぷりある。しかし、それよりおののいたのは、第一回大会のリザルトだ。

 

九州の強者達でさえ15時間以上、昨年の2位以降はなんと17時間以上もかかるという、単純に距離や累積標高だけでは推し量れない難しさが、阿蘇のトレイルにはあると思った。

 

そんな難コースを前に私はといえば、4月初旬まで公私共にスキー漬け。。。そこからトレランにシフトし、トレーニングはしてきたが明らかにラン不足(最長30kmの練習しかできていない…)。走る脚が全く準備できていない中での挑戦であり、今後のレースのために怪我をしないように正直、完走最優先、などと弱々しい事を考えていた。

 

だからこそ今までとは違った、思い切った作戦に出れたのかもしれない。

 

その名も”がんばらない作戦”は、前々からやってみたかったが、なかなか実行に移せなかった革新的な戦法だ。

 

とにかくペースを一定に保つ。ひたすら保つ。追い抜かれようが、女子に負けようが、我慢。誰とも競争しない。

 

最初からラストスパートを信条とする私にとって、捨て身の作戦と言ってもいい。捨て身なのに頑張らない、がんばらない事をがんばる作戦なのだ。

 

ペースはいわゆるキロ何分ではなく、最大心拍数の70〜75%、上りでも80%以上には絶対に上げないように、という縛り付きで阿蘇への挑戦は始まった。

  

スタート地点へ。世界最大級の広大なカルデラ地形を走れる喜びに、スタート前なのにすでにテンションが上がる。

スタート直前。ニューハレ芥田さんに魂を注入してもらい、テンションMAX。

スタートして10kmも走ると外輪山に突入!いきなりこの絶景。走りたい、思い切り走りたい!!けど、我慢。。。

70パー縛りだと、女子にも負けそう。。。50位くらいか。。。

うおー!全力疾走したい!

あー、速く走りたい!!

ぐおー、飛ばさずにはいられない!!

いや、ダメだ。そんな事をしたら今日はマジでフィニッシュできないかも。行動時間10時間までは持つだろう。しかし今日は、そこから更に7時間以上、動き続けなければならない。。。

前半は外輪山を上ったり下りたりを繰り返す。30km手前


コースマップ
進撃の巨人のウォールマリア?を思い浮かべてしまう。。。

下って街に出たらエイド、そしてまた山へ上る。ヨーロッパのレースみたいなコースレイアウト。

30km過ぎから、前に人が少なくなってきているので、どんどん順位が上がってきているのを感じた。ただし、どの位置にいるのかはわからなかったし、今日の私には関係のない情報だった。

 

3Aすずらん公園休憩所(50km地点)。距離的には半分だが、時間は6時間ちょい。まだ1/3くらいか。。。



ここで初めて3位だと知らされる。意外だった。めちゃくちゃ暑かったがペースがゆっくりなのと、途中の川やエイドで、かけ水で筋肉を冷却しながら走っていたので、それ程堪えていない。まだ最後(フィニッシュ)まで行ける確信はなかったけど、自分が保ってきたペースに自信が持てた場面だった。

 

しかし本当のレースは4A(66.6km/高森町町民体育館)から。いや、5A(84.8km/清水峠)からだ。昨年の上位陣も、ここからフィニッシュまで6-7時間(全体の1/3)は平気でかかっているからだ。

 

ゆっくり走って来た、つもりだが5Aに着く頃には脚が終わっていた。

地元のおっちゃん)兄ちゃんよく来たね、でもまだだよ。こっからだから。地蔵峠ってのがあるからさ、ガハハ。

やまだ)マジで怖すぎるから、おっちゃん。。。

泣きたくなるような階段地獄が立ち塞がる。100段以上はあるだろうな。数えてないけど。

 

A6(97.7km/地蔵峠)になんとか到着。フィニッシュまであと12km。終わったも同然だ!フィニッシュを確信した。

 

しかしこの先に、地蔵峠より恐ろしい俵山という壁が待ち受ける。。。

 

流れ星かと思った。いや、飛行機か!?よーく見るとやっぱり動いている。まさかのヘッドライトだった。。。あーマジか、あそこまで上るのか。。。最後の最後に大物が待っていた。暗闇でその正体は見えなかったけど、ここまで走って来た身体には強敵過ぎるラスボスだった。何度も立ち止まりながらピークへ。そしてフィニッシュへ。


15時間59分。3位。予定よりずっと早いタイムでフィッシュする事ができた。がんばらない作戦でしたが、最後はやっぱり根性でした。

 

選手、サポーター、そしてスタッフの皆さんと駆け抜けるロングレースの目に見えない力を感じながら最後の1kmを走りました。感動しました。応援ありがとうございました。

前半、美しい絶景にたくさん写真を撮りました。後半、たったの一枚だけ。これ、修行でしょ。。。

感謝

山田琢也

 

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